イタリアで考えた日常生活のトレードオフ
ほぼ一年ぶりに海外出張に行って来た。
お菓子屋さんと、そのお菓子屋さんを
クライアントにしている
チョコレートメーカーのツアーだった。
行き先はイタリア
みんなパリの凱旋門に着目する中
あれはローマの凱旋門のコピーで
出来上がったのも19世紀
こちらこそオリジナルで
紀元前の凱旋門!
と上から目線のイタリア
とにかく歴史が長い
コロッセオ(円形闘技場)をはじめとして
紀元前の遺跡がゴロゴロある❗
そのイタリアで
旅の楽しさを満喫しながらも
不便で不自由な思いも
たくさんしながら
その不便と引き換えに
貴重なものを失わずにいる
イタリアを再認識し
逆に何でも便利にした結果
大切なことに気がついていないのが
今の日本ではないかと思った。
イタリアはれっきとした観光立国で
観光客の支出による経済効果は
半端ナイ数字になるはずである。
それにしては
観光客と観光バスへの
リスペクトが見られない。
例えば紀元前の遺跡がひしめく
ローマの町の中心部から
観光バスを締め出す政策が
年々厳しくなっていて
僕らは目的地から数百メートル
離れたところでバスを
乗り降りしている。
Door to door で
遺跡の近くで乗り降りされたら
景観が台無しになる
ということらしい。
これはローマに限らず
他の都市でも同じことが言える。
現場ではうんと歩かされて
不便な思いをしながらも
景観保存という理念には
納得せざるを得ない。
富士山の五合目まで
大型バス数十台分の
駐車場を完備し
ゴミが捨てられない対策よりも
観光客の都合を優先している
日本とは大きく違う!
またイタリアのホテルでは
もちろん宿泊客は大切にするが
ホテル側の都合やルールを
曲げてまで宿泊客のリクエスト
には応じない。
僕らは移動時間の都合で
強行軍の日程がどうしても
できてしまう。
早朝のチェックアウト、出発の前日
ホテルの朝食レストランオープンが
8時だと言うので、あまりにも遅く
7時に早めてくれと言っても
頑としてリクエストに応じない。
シエナ近郊のオーベルジュで
田舎だから仕方ないと思ったが
早朝出発するため
朝食を早くとりたいというリクエストは
これまでもあったらしいが
従業員の出勤時間を早めて
宿泊客のリクエストに応じよう
という発想が経営者にない。
地方だけかと思ったら
大都市のシティホテルでも同じ❗
フィレンツェのホテルでも
翌朝は日曜日だから
従業員の出勤が遅いため
レストランは7:30オープンという。
いつも通り7:00に開けてくれないと
困ると抗議したし、日本では
日曜日でも6時からオープンする
レストランがほとんどだと説明したが
聞く耳を持たない。
カトリック教徒には
命と同じくらい大切な
安息日という概念があって
日曜日は出来るだけ働きたくない
という感覚はサービス業の
人間も共通なのだ。
日曜日は休みたいという感覚は
小売業界でも生きていて
昔に比べれば日曜オープンが
増えてきたが、それでも
日曜日は大半のお店は閉まっている。
レストランやカフェは開いているが
日曜休みのお店も非常に多い。
イタリアだけではないが
日本では当たり前の社会的インフラ
にもなったコンビニが街中に
見あたらない。
コンビニは土日祝日関係なく
営業する業態で、しかも
シフトを組んで24時間営業もある。
ヨーロッパの人には
顧客ニーズに対応するため
日曜でも深夜でも働くという発想は
なく、日曜祝日に時給を倍にしても
勤務する人が少なく、家族と共に
過ごすプライベートな時間を
大切にしている。
コンビニでは早朝でも深夜でも
仕入れ先からトラックが乗り付け
鮮度重視に対応しているが
そのことで起きる騒音問題や
深夜出歩くことで起きる犯罪など
治安の問題もあるため
コンビニという業態はなかなか
受け入れられないと聞いた。
深夜まで営業している
コンビニ代わりの店もあるが
たいていはアラブ人、エジプト人
インド人、中国人などで
キリスト教、特にカトリックと
無関係な宗教の人たちが多い。
トレードオフという言葉があって
一方を選択することで
他方が成立しないとか
何かを選ぶということは
何かを諦めることだという概念として
使われている。
日本人として
24時間買い物ができるという
利便性と引き換えに
犠牲にしているものはなかったのか
そして、サービス業でも
顧客の都合を最優先にすることで
大切な理念や価値観で
お座なりにされているものは
ないのか?
今回のイタリア旅行を期に
考えさせられた。